「ティップラン」という言葉を聞いたことはあるけれど、実際にどんな釣りかよく分からない…、そんな方も多いと思います。
私自身も陸っぱりエギング(通称ショアエギング)ばかりを楽しんでいたため、ティップランには馴染みがなく、「船に乗る釣り」「専用のエギを使うらしい」くらいの知識しかありませんでした。
この記事では、そんなエギング経験者だけどティップランは未経験という立場から、ティップランの基本・エギングとの違い・必要な道具などを丁寧に紹介していきます。
「ちょっと気になってたけどハードルが高そう…」という方に向けて、ティップランの第一歩をわかりやすく解説していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
この記事の目次
ティップランとは? エギングとの違いを解説
ティップラン(TRと略します)とは、船の上から専用のエギを使ってアオリイカを狙う釣法です。
一見するとエギングの一種に見えますが、ショアスタイルとはまったく別物と考えた方が良いでしょう。
エギングをやっている人でも、「ティップランって聞いたことはあるけど、実はよく知らない…」というケースは少なくありません。
ここでは、ティップランの基本と、ショアエギングとの違いをわかりやすく解説します。
ティップランとショアエギングの最大の違い

最も大きな違いは、釣り場が船の上になることです。
陸からのエギングでは、岸近くの地形や潮を読みながらポイントを探していきます。
一方でティップランでは、潮に流される船の動きを利用して広範囲を効率よく探れるのが特徴です。
釣り方にも違いがあります。
ショアエギングでは「ダート」や「ジャーク」でエギを大きく動かして誘いますが、ティップランでは、エギをシャクったあとの「ステイ(静止)」時間が特に重要になります。
このステイ中にアオリイカがアタックしてくるため、わずかなアタリを見逃さない集中力が求められます。
「ティップラン」という名前の由来

「ティップラン(Tip-run)」という名前は、ロッドの先端(ティップ)に出るアタリを見て取る釣り方であることに由来します。
ティップランでは、アタリが手元に伝わるよりも先に、ロッドの穂先にわずかな動きとして表れるのが特徴です。
その動きを目で確認し、すかさずアワセを入れる。この一連の流れが、この釣法の名前につながっています。
つまり、目で見て掛けるスタイルのエギングとも言えるでしょう。
狙うイカは?基本はアオリイカ

ティップランで狙うターゲットは、基本的にアオリイカです。
特に晩秋〜初冬などの、陸からでは届きにくい深場にいるイカに有効です。春には、大型の親イカを狙うティップラン便も注目されています。
外道としてコウイカやスルメイカがかかることもありますが、基本はアオリイカ特化の釣法と考えて問題ありません。
イカメタルとティップランの違い

ティップの変化を見てアタリを取るスタイルは、夜釣りで人気の「イカメタル」にもよく似ています。
実際、どちらも繊細な穂先の動きが釣果に直結する釣り方であり、「ステイ(静止)」の時間がとても重要です。
ただし、イカメタルとティップランは対象や時間帯がまったく異なるため、基本的には別のジャンルとして扱われています。
- ティップランはアオリイカ狙い。主に早朝〜日中もしくは夕方〜夜間の釣り
- イカメタルはシロイカ(ケンサキイカ)狙い。夜間中心の釣り
さらに、使用する仕掛けにも大きな違いがあります。
ティップランでは30〜40gの重めのエギを使いますが、イカメタルでは鉛スッテとドロッパー(小型エギ)を組み合わせる仕掛けが主流です。


出典元:YAMASHITA
つまり、似ているようで狙う魚・釣る環境・タックル構成がまったく別なのです。
「夜にイカを釣るスタイル=イカメタル」
「昼や夕方にアオリイカを狙うスタイル=ティップラン」
というように、ターゲットとスタイルでしっかり区別しておくことが大切です。
特徴とメリット・デメリット
ティップランは「釣れやすい」と言われる一方で、「装備が必要」「船に乗らないとできない」など、ハードルを感じる人も多いのが正直なところです。ここでは、ティップランの代表的なメリットとデメリットをそれぞれ紹介し、どんな人に向いている釣法なのかを整理してみます。
メリット①:広範囲を効率よく探れる

ティップランでは、船が潮に乗って流されながらポイントを変えていくため、
自分の足では届かない沖の深場までカバーできます。
ショアエギングでは、どうしても届く範囲に限界がありますが、ティップランならイカの着きやすい“かけ上がり”や“根回り”も効率よく攻略可能です。
メリット②:目で見て掛けられる

最大の特徴でもあるのが、ロッドの穂先に出るアタリを「見る」釣りである点です。
「モゾッ」「ピタッ」といった小さな違和感を見逃さず、視覚的に判断して即アワセ。
この独特の緊張感と駆け引きにハマるアングラーも多く、「釣った」ではなく「掛けた」感覚が得られるという声もよく聞かれます。
メリット③:潮が効いていてもエギが安定する

出典元:YAMASHITA
ティップラン用のエギは30〜40gの重ためのモデルが中心です。
これにより、潮の影響を受けにくく、狙った水深をしっかりキープしやすいのが特長です。
ショアエギングではエギが流されて底取りしづらいような場面でも、ティップランなら明確に「着底→シャクリ→ステイ」が成立するため、釣りのテンポも安定します。
デメリット①:船に乗る必要がある

ティップランは基本的に遊漁船(釣り船)に乗って行うスタイルです。
そのため、以下のようなハードルが発生します。
- 予約が必要(人気シーズンはすぐ満席に)
- 出船場所までの移動がある
- 乗船料(半日〜1日で7,000〜15,000円前後)
- 天候によっては中止になる
気軽にフラッと行けるショアエギングとは違い、ある程度の準備が必要になります。
デメリット②:タックルを揃える必要がある

ティップランでは、専用のロッド・リール・エギが求められます。
特にロッドは、アタリを明確に視認できる繊細なティップと感度の高さが重要です。
また、エギも重さやバランスがショアエギング用と異なるため、手持ちの道具がそのまま使えるとは限りません。
ただし、最近はレンタルタックルを用意している遊漁船も増えてきており、初心者でも始めやすい環境が整いつつあります。
デメリット③:船酔いや寒さへの備えが必要

船釣り全般に言えることですが、波に弱い人は船酔いのリスクがあります。
特に朝イチは食事・睡眠・酔い止めの有無で体調が左右されやすいため、事前の対策が重要です。
また、秋〜冬にかけての出船が多いため、防寒対策やレインウェアなど装備面での準備も欠かせません。
ティップランはこんな人におすすめ
- ショアエギングでサイズや数が伸び悩んでいる人
- 秋〜冬でもアオリイカを狙いたい人
- 船釣りに興味はあるけど、何から始めればいいか迷っている人
ティップランは、道具と環境さえ揃えば、非常に釣果の安定しやすい釣法です。
最初の一歩さえ乗り越えれば、エギングの楽しさがさらに広がるはずです。
ティップランのエギはここが違う!
ティップランでは、専用設計のエギ(ティップランエギ)を使用します。
一見するとショアエギング用のエギとよく似ていますが、重さ・構造・用途がまったく違うため、
釣果に大きな差が出るポイントでもあります。
ここでは、ティップラン用エギの特徴と、ショアエギング用との違いについて詳しく見ていきましょう。
ティップラン用のエギとは?

出典元:YAMASHITA
ティップランエギとは、重さがあり、沈下姿勢が安定していることを前提に設計されたエギです。
エギ王TRの場合、21gもしくは27g、ダートマックスの場合は30gもしくは40gとショアエギより重いが特徴で、潮流のある沖のポイントでもしっかりと底を取り、安定したステイ姿勢を保てるように作られています。
フォール中の姿勢も水平に近く、ステイ中の“違和感の少ない浮遊感”がアオリイカを誘う要素となっています。
ショアエギとの見分け方

見た目が似ているため、慣れていないと間違えてしまうこともありますが、以下のような違いがあります。
比較項目 | ティップラン用エギ | ショア用エギ |
---|---|---|
重さ | 約30〜40g前後 | 約15g〜20g(3.5号) |
使用水深 | 水深10m以上(ボトム中心) | シャロー〜中層 |
フォール速度 | 速めで直進的 | ゆっくり沈むものが多い |
使用場所 | 船(流し釣り) | 堤防・磯(キャスト) |
モデル例 | エギ王TR、ダートマックスTRなど | エギ王K、LIVE、Searchなど |
重さだけでなく、フォールバランスや姿勢の安定性も大きな違いです。
ショア用のエギをティップランで使うと、底が取れず流されてしまうため注意が必要です。
ヤマシタでは「エギ王TR」
ヤマシタ製品の中でティップラン専用モデルとして知られているのが、「エギ王 TR」シリーズです。
定番のカラーに加えて、毎年のシーズンごとに新色が出ます。
このエギ王TRの特徴としては以下の通りです:
- フォール姿勢が水平に安定
- 背中に鉛ウエイトを内蔵しており、不要なブレが少ない
- 潮流下でもラインが立ちやすく、ティップの変化が出やすい設計
また、「TRサーチ(廃盤)」や従来のエギをTRで使用できるようにするための「TRシンカー」などもあり、釣行スタイルや状況に応じた使い分けが可能です。ただし、ショア用のエギと混在させてしまうと、フォール姿勢や着底のタイミングがズレて釣果に直結するため、最初にしっかり区別しておくことが大切です。
ティップランの魅力
ショアエギングに慣れている方にとって、ティップランは少し遠い存在に感じるかもしれません。
しかし実際に試してみると、「もっと早く知っておけばよかった」と感じる魅力がいくつもあります。
ここでは、ショアエギング派の視点から見たティップランの良さを3つに絞って紹介します。
「釣れない時間」が減る

私が考える最大のメリットはこれです。
ショアエギングをしている人なら全員が感じるであろう悩みとして、
- シーズン終盤に近づくにつれて釣果が落ちる
- 週末はどのエリアも釣り人で溢れている
- ランガン(Run &Gan)がメインになるため体力が必要
などがあると思います。さらに潮が動かない時間帯や、地形的に釣りづらいなどもあると思います。
特に秋終盤〜冬にかけて水温が低下することでアオリイカの活性も下がり、反応のないまま数時間あるいは1日が経過することも少なくありません。
その点ティップランでは、船の流し方によって次々にポイントを変えていけるため、1か所にとどまる時間が短く、テンポよく“イカに出会えるチャンス”を増やせます。
秋〜冬にかけての新しい選択肢になる

先ほどの通り、秋の数釣りシーズンが落ち着き、冬に向かうにつれショアエギングでの釣果は急激に厳しくなります。
しかしティップランでは、水温の安定している深場にいる個体を狙えるため、オフシーズンに入りがちな時期でもイカ釣りを継続できるのが魅力です。
また、春には大型の親イカ狙いのティップラン便も出船することがあり、季節ごとに異なる楽しみ方ができる点でも魅力的です。
ティップラン経験がショアエギングにも活きる

意外に思われるかもしれませんが、ティップランで得た“アタリの見極め力”や“フォール姿勢の意識”は、ショアエギングにも応用が利きます。
たとえば、ラインの変化やロッドの挙動に敏感になることで、これまで見逃していたような微細なアタリに気づけるようになる人も多くいます。
ティップランで身につく“掛ける意識”は、陸からのエギングを一段レベルアップさせてくれるきっかけにもなります。
実際に釣れている?ティップランの釣果情報をXからチェック
実際に釣れている?Xで見つけたティップランの釣果投稿
ティップランについて理解が深まったとしても、「本当に釣れているの?」「初心者でも成果が出るの?」と感じる方も多いのではないでしょうか。
ここでは、実際にX(旧Twitter)で発信されているティップラン釣果の投稿をいくつかご紹介します。
初TRでちゃんと釣れたから褒めてほしい🥺
— kouichi (@kouichi371091) April 28, 2024
微妙なアタリ取れて掛けれて数は出なかったけどめっちゃ楽しかった!
初めての釣り方で釣れると嬉しいね🤗
真鯛は飽きない程度にアタリがあったけど5バラシ決めて3枚でした😘
2日連チャンで湾NAVI行ってきまっ🦑!
#ティップラン #アオリイカ #タイラバ pic.twitter.com/vUna9dPbv0
新作エギとかスッテが多くて
— 敬、山建(kei,yamaken (@13psyence) January 24, 2025
TR方面は去年の新作なのに全然アッピルしてなかったけど、
めっちゃ釣れたからね!
相模湾解禁日にゃ竿頭になったレベルで釣れるからね!w https://t.co/b3V0coahNO pic.twitter.com/Ajrf72aXdD
まとめ ティップランはエギングの“次の一手”になる

ティップランは、ショアエギングとは一線を画すスタイルですが、実はエギング経験者にこそ馴染みやすい、もう一つのアプローチになります。
そのメリッととしては、
- 船から沖のポイントを狙える
- ティップでアタリを視覚的に取れる
- 秋〜冬のシーズンオフをカバーできる
- ショアエギングにはない「掛ける」感覚が得られる
があります。
最初は専用タックルや船の利用にハードルを感じるかもしれませんが、初心者向けの遊漁船やレンタル装備も充実してきており、意外と気軽に体験できる環境が整っています。また、エギ王TRシンカーなどを活用することで、従来使用しているエギの流用も可能です。
「確実に釣果を上げたい」
「釣りとしての引き出しを増やしたい」
「秋終盤から冬にかけてもアオリイカを釣りたい」
そんな方にとって、ティップランは間違いなく魅力的な選択肢になると思います!